野良猫山男

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眠れないほど
 理由なく眠れないほど嫌なことはない。
 スマホ見たら目覚めちゃうし、でもすることないし布団から出れない。だから嫌なことばっかり考えちゃう。今日なんであんなこと言ったんだろ、もしかして私のこと…⁈
 眠れないから病むのか。
 病むから眠れないのか。
 どっちでも良いから早く寝たい。
 最近はずっと目の下にクマがある。
 この日は眠れないまま日が昇ってしまった。

 クマさん!クマさん!
 何故か、暗い私に陽の方の男が突っかかるようになってきた。みんなに優しいし、話したことないわけでもない。多分私の名前知らないんだと思う。目立たないし。
 今日も眠れなくて目の下のクマが目立つ。
 目立つからか、名前を知らないからか、その両方か。『クマさん』と呼んでくる。
 正直嬉しい。かっこいいし、可愛い。犬系男子ってやつ?タイプだ。
 絡んでくるようになったとは言ったが、悪いことはして来ない。てか良いことしかしない。
 一昨日は挨拶してくれた。昨日は机運びを手伝ってくれて、今日は日直の手伝いをしてくれた。
 私も薄々気づいている。もしかして私は好きかもしれない。どうしよう、気づいてしまった。気づいたからか、目が合うと顔が赤くなるし、まともに話せない。心臓が早い、やばいやばいやばい‼︎
『クマさん!』
 走って来たのか息が荒い。こっちまで息が荒くなってしまう。
 手には何か持っている、?
『明日暇?これ…』
 手紙…先生から日直の頼み事?なんだろう。でも明日は日直じゃない。
『今は開けないで!オレがいなくなって開けてよ?』
 彼の言葉通りに動いてあげよう。
 親友とか友達とかいないし帰りながら開けようかな。てか可愛かったな、犬みたい。
 帰り道、雨が降ってしまった。傘は持って来ていない…女子力の無さがここで見えてしまった。
 このくらいの雨イケるっしょ。コンビニまで走った。傘を買おうと入るも、財布が軽い。終わった。
 コンビニを出ると雨はさらに強くなっていた。運が悪すぎる。
 そうだ、さっきの手紙読もう。
『クマさんへ
  いつもみんなのために頑張ってるの見て
         好きになっちゃいました。
  もしよろしければ明日の放課後、
          告白させてください。
  廊下の提示版の前で待ってる!
              犬飼よりU・x・U』
 最後の絵文字かわいーな。
 …
 ほんとかな、ほんと⁈あれっ嘘かな⁈やばい、両思い⁈でもでも嘘つくような人じゃないし!
 大雨の中コンビニ前で1人慌てていた。
 もしほんとなら…幸せ…。
 大雨の中走ってくる人がいる。学生だろう、と言うかうちの学校も制服だ。…犬飼くんだ!
 どうしよう、今会っても気まずいだけだよ⁈やばいやばいやばいやばい‼︎私顔真っ赤じゃない⁈
 思わず目を逸らした。犬飼くんも気づいたようだ。
『…クマさん⁈よ、よよ、読んだ、?』
 めっちゃ噛んでる…可愛い。顔真っ赤じゃん。
『あの、明日告白するから…えっと…一緒帰ろっか!』
 少し照れ臭い笑顔で傘を差し出した。断る理由もない。
『駅まで送る!』
 なんで私の駅知ってるのかな?もしかして私が意識する前から…。色んな想像が膨らむ。

 ぼーっとしてたら1日の終わる直前にいた。
 いつも通り眠れないけど、いつもの考えすぎが原因だけど、いつもと同じじゃない。明日を否定する私じゃない。
 明日が楽しみで楽しみで堪らなくて、ドキドキで眠れない。
 こんな理由で眠れないほど幸せなことはない。

12/5/2023, 4:54:52 PM