雨が降っている。
ザァァァとそれなりに強い雨がコンクリートを打ちつけている。
だんだん深くなっていく水たまりを踏んだ靴が、バシャリと水をはねた。
「はぁ、はぁ……」
雨に濡れたのか汗なのか分からない雫が彼の頬を流れていく。
傘はさしているというのに、走っているせいでその足元や肩は濡れていた。
(まったく、どこへ行ったんだ……!?)
探しているのは、少年だ。
野良猫のように勝手に居着いて、ふらっと消えた正体不明の少年。
彼を拾った日も、こんな雨の日だった。
(勝手に居なくなったんだから、それでいいだろうに)
なのに、自分は彼を心配して探し回っている。
それは彼を保護していたからというだけではない。
「見つけたらメシ作らせてやる……!」
ここ数日彼の作る食事に胃袋を掴まれてしまったからかもしれない。
「どこにいんだよ!」
少年を探すにあたって、ようやく名前も知らないことに気がついた。
/9/8『雨と君』
9/7/2025, 12:39:20 PM