ヒロ

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僕の師匠は鈍感で困る。
折角意中の彼女が遊びに誘ってくれたのに、その流れで何で僕にまで声をかけるのか。

君、彼女のことが好きなんでしょ。
僕まで誘ってどうするの。
二人きりで出かける自信がないのか、はたまた未だに彼女が僕のことを好きだと勘違いしているのか。
うーん。彼の様子を見るに後者の方かな。
ああ、でもね。
バレンタインの日に、僕は彼女の告白を既に断っているんだよ。
そのことは君もとっくに知っているはずなのに。
橋渡しのような真似は、彼女を応援しているつもりなのだろうか。
まあ、さりげない気遣いや、そういった優しいアシストが出来るのは、彼の長所でもあるけれど。
自分の恋路を後回しにしているのがもどかしい。

師匠は気付いていないみたいだけど、彼女の想い人はもう僕じゃない。
他でもない、君自身だよ!
どうしてそんなに鈍いのか。
紆余曲折あって、今でこそ仲良し三人組のように行動している僕らだけれど、二人の様子を見ていれば、想い合っているのは嫌でも分かる。
ああ、もう。勢いに任せて、何度ぶちまけてやろうと思ったことか!

でも、でもね。
大事な友人二人だからこそ、彼らのためにもそんなことは絶対しない。
上部だけの交遊に、辟易していた僕を救うきっかけをくれた君たちだから、誓うとも。
まあ。もうちょっと、ペースアップしてくれると助かるけどさ。
僕が気長でいられる内にお願いしたいな。
じっと待っててあげるから。
君たちのペースで結ばれたら、その時こそは思い切り、おめでとうと祝福させて。


(2024/10/25 title:062 友達)

10/26/2024, 9:59:26 AM