手、腹、顔。全身の痛みに意識が朦朧とする。街行く人々は、ふらつく僕に蔑みの目を向けてる。彼を除いて。
「だからやめとけって言ったよな?」
ボロボロの僕にそう言った。肩に手を回し、付き添ってくれてる。
「あいつら間違ってる」
「ああそうだ。お前が正しいよ」
面倒くさそうに、だけどどこか誇らしげに彼は答えた。
「で、やったのか?」
「ああ、かなりいいとこいったと思うよ」
「右フック?」
「強烈なのを」
「そりゃいい。あれきついからな。俺も半日起き上がれなかった」
気づけば、僕の家に着いていた。彼は僕をソファに寝かせ、保冷剤を投げる。
「ありがとう」
心外なことに、彼は酷く驚いていた。
「どうした? 頭に食らったのか?」
「平気だ。ちょっと、感謝したくなっただけで」
「……やっぱりおかしい。病院に行った方がいい」
「大丈夫だって。早く済ませてくれ」
「わかった」
彼はそう言って、僕の顔を縫い始めた。
『友達』
10/25/2022, 1:56:37 PM