「鏡」
鏡は何か不思議な存在です。
例えば、天照大御神の御神体は八咫鏡です。
そして、月は鏡のように太陽の光を反射して、夜空に月光を放っています。月光について調べたことがあるのですが、太陽光との大きな違いは、紫外線、赤外線が含まれていない事でした。
美しい鏡として心の中に浮かびあがるのが、モネの『睡蓮』です。その多くの作品が、睡蓮が咲いた池を描いたものですが、池の水面には空、そして雲が映しだされています。
その事に気がついたのは四十代の初めの頃だったでしょうか。二重の衝撃がありました。一つは、その事に長く気がつかなかった自分自身への迂闊さでした。もう一つは、池が鏡の役割を果たしていて、そこに無限の世界の広がりを感じていたモネの深い眼差しです。
『睡蓮』の絵は何度も観る機会がありました。還暦を過ぎても私は、森羅万象のこの世界で、浅いものしか理解できていないと感じる事ばかりです。人とは、そうしたものかもしれません。
鏡とは、誠に正直です。鏡に映る私は老いていて、若い頃、子どもの頃の私は記憶の中にしかいません。しかし、老いてこそ理解できるものもあります。
今後、日本は高齢者が増えてきますが、人は若さや美醜だけでは語りきれないものがあります。そして、生ある限り、どれだけ齢を重ねても進化し続けることができます。成長し続けて下さい。そう鏡のなかの自分に語りかけてみて下さい。
8/18/2023, 1:00:28 PM