ここはとてもいびつだ。歪んでいる。
みんなが愛を望んで、そればかりに夢中になって誰かに与えようなんて考えもしない。こんなにいるのに誰も与えないから誰も得られない。そこにないのに求めるだけ。ないものねだりだ。
母に愛を求めて狂ったフリをする姉は、結局母だけでなく父にまで愛されずに泣き崩れた。
狂った娘を悪者扱いして被害者のフリをする母は、父の言葉の意味を理解しないまま愛されていると思い込む。
母娘喧嘩の仲裁をするフリをする父は、何かあると必ず頼ってくる母にだけ優しくして愛を確認する。
あい、アイ、愛…、ぜーんぶ〝愛〟のため
くだらない家族ごっこを繰り返してまるでそこに親子や夫婦の愛があると信じて疑わない。執着や依存でベタベタに貼り合わせただけの狂気を愛だと言い張るのだ。
同じ顔をした姉を連れて部屋に戻る。破れた古くさいパーティードレスを踏みつけて可哀想な姉を連れていく。鬱陶しい親戚どもに親という名の狂人を押しつけて姉の相手をする。
向かい合って座り、泣き続ける姉と顔を合わせる。同じ造形で同じ髪型をして同じ服を着る双子。周りの理想を押しつけられ個性を全否定される、好き勝手に操られる人形のようだ。
「あなたとわたしはちがう、ちがうんだよ」
だからその顔で愛を求めないで、とは言えない。
でも姉までわたしたち双子を同一視してしまったらふたりとも消えてしまう。ちゃんと別の人間なんだから間違えないで。
「あんな狂人なんかと一緒にならないで」
どうやったらあなたもわたしも救われるのか一緒に考えてよ。傷つかないで、悲しまないで、無理に笑わないで。
あんな奴らのために存在しているわけじゃないって言ってよ。
【題:あなたとわたし】
11/7/2024, 2:19:35 PM