異国の男女、異国の旋律。
その中で彼女は異国の言葉で歌い、踊っている。
『友よ、忘れないで』という詩だと言う。
郷里へと帰りゆく一団を送るには、ふさわしいと思った。
『何だか、あちらの人のようですね。』
傍らで部下がぽつりと呟く。
何の隔たりもないというのに、我等は一歩も動けない。
当たり前に調子を合わせ、楽の音に体を揺らし、同じ詩を口遊む人々。咲き綻ぶような笑顔の女。
何処にもつけ入る隙は無い。
『邪魔をするのは野暮だよ。』
割って入る理由も手立ても思い付かないしね。
細く長くため息をつく。
深入りせず油断なく冷静に見極めを、だなんて口にしたのは誰だったやら。
今や躍起になって、その自由を縛り囲い込む始末。
わかっていたつもりだった。
君はいつでも、何処へでも、
この手の及ばぬ、遠くへでも行ってしまえる。
それこそ山でも海でも越えて。
今の私は、それがとっても気に入らないよ。
穴よ空けよとばかりに見つめる。
ほんのちらりと、目配せの一つくらい呉れてもいいのに。
そうしたら、ほんの少しは、大目に見たのに。
もう、無理だ。ああ、駄目だね。腹は決まった。
旅立つ日など、来させはしない。
ここに居て、君を見ている。私の気が済むまで。
たとえ朽ちるまでだとしても。
それを忘れさせはしない。
ふぉうぎぶ、みーまい、ふれんど。あんだすたん。
【踊りませんか?】
10/4/2023, 1:11:38 PM