とある恋人たちの日常。

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 俺の仕事は救急隊で、人を助けることが仕事だ。
 緊迫感があって、精神的に参る時もある。だからこそ、普段はバカバカしいまでのくだらない話で盛り上がる。
 背中に冷たいものが落ちるような緊張感が走ることだって多い。だからこそ、救助に行く前はストレスを減らしリラックスするように心がけていた。
 
 今日もヒリついた現場で救助を行い、病院に戻ると緊張感が緩んだ。
 
「休憩入りまーす」
 
 無線で他の隊員へ伝えると、それぞれの言葉で返事が帰ってくる。俺はその言葉を確認して、休憩所に入った。人は誰も居なくて、静かだから聞こえる無機質な機械音が響いている。
 迷わず自販機に向かい、飲み物を買うと適当な席に座った。
 
「ちかれたー……」
 
 誰もいないからこその大きな独り言。ペットボトルのキャップを開けて、一気に含む。
 
 さっきの現場は、久しぶりにキツイ救助だったな……。
 
 俺は目を閉じて、さっきの救助の状況を反芻する。
 
 あそこはもう少し、出来たよな。
 ああ、でもその後はいつもより早く対応出来たな。
 
 次の現場に活かしたい。そう思うからこそキツイ時ほど脳裏に浮かべ、思考をめぐらせた。
 
「ふうー……」
 
 だいぶ頭がパンパンになってきたな。
 そんな時、スマホが震えた。なんだろうと覗いてみると連絡事項が回ってきていた。
 読み終わって、スワイプしてホーム画面に戻した時、視界に入ったのは恋人の写真。それを見た時に心が軽くなった。
 
「あ、やっべ……」
 
 いつも彼女から言われていることを思い出す。反省はしてもいい。でも、それで無理しないで、それで苦しまないでと。
 
 自然と口角が上がる。
 
 俺はもう一度スマホの画面を見つめた後、目を閉じた。深呼吸をするとパンパンになっていた頭が、冷静さを取り戻していくのが分かる。
 
「反省は大事。でも、やるなら冷静に」
 
 俺は飲み物を口に入れてから、もう一度考えていった。
 
 うん。
 もう、大丈夫!
 
 

おわり
 
 
 
一七七、脳裏

11/9/2024, 1:13:43 PM