これで最後
これで最後、何回そう思っただろうか。呼び出しがある度に学校帰りに何度も寄ったあの汚部屋。物で溢れて足の踏み場も無いようなあの部屋に行くのは足取りは重かった。適当なつまみに気持ち程度のお酒と、飲めない私が飲んでるふりをできる唯一の甘い缶。映画を観ながら飲もうなんて、そのどちらも本当の目的ではないくせに、それに乗っかってしまう自分も自分だ。エンドロールが流れる頃にはきっと夢の中にいて最後まで見れた試しはない。それでもただ映画を見たい女を気取って部屋に訪れるのだ。こんな関係いつまで続くのか、続かせているのは自分で、いつか需要が無くなれば終わってしまう。それは寂しいなと思う。人前では泣かないけど一人で眠りにつく時にそう思ってしまうだろうな。薄ら感じる自分以外の影も、汚い部屋も、ジュースみたいなお酒に混じってくる度数の濃いお酒も、目を閉じると不思議と我慢できる。目の前の何かを諦めたような目をしているこの人と、私が重ね合わせているあの綺麗な人は違うのに。私を呼ぶ声も、私に対する気持ちも、くれる言葉も全てが違うのに、どことなく形の似ているその人を代わりにしてしまっている自分は最低だ。でもこれでいい。目の前の人も私そのものではなく適当な存在が欲しいだけで、代わりがいればそこまで。そんな気持ちの二人だからこそだらだらとここまで続いてしまっているのだった。次の日も1限だと言うのに眠りこけてしまった私は急いで昨日の夜に来た道を引き返していた。昨日と同じ道なのに反対方向から見たら全く違う道に感じる。どこか終わりのない迷路のような関係も一目散に引き返してしまえばいい。そう気づいた。
5/27/2025, 10:30:40 AM