革手袋を外した手に触れるたび、その生々しい体温に内心驚いてしまう。彼から感じる人間らしさとアンバランスで、少しかさついた節の目立つ指も含め、精巧な人形に本物の人間の手がついているかのような違和感を覚える。
ぐっと手を引かれて躓きそうになり、顔を見上げると薄く笑っていた。無言のお叱りに心にもない謝罪を呟きつつ体を寄せ、手のひらを擦り合わせながら指を絡める。満足そうに甲をくすぐられたので爪を軽く立ててやった。
思えば手を繋いだことなんて今まであっただろうか。手首を引かれたり革手袋越しに握ることはあっても、こうして直に手のひらを合わせるというのは初めてかもしれない。この手に触れられたことは幾度となくあるのに、手を繋ぐなんて恋人じみた行為はしたことがなかった。
互いを縛る権利など私たちには不必要だと思っていたが、どこか楽しそうな横顔を見るに、どうやらあってもいいものらしい。ほんの少しだけ握る手に力を込めた。
『手を繋いで』
12/9/2023, 6:38:05 PM