花畑
「……。」
…これで、よかったんだ。
これが私の望んできた死に方だから。
私は幼い頃から花が大好きだった。
両親によると、
花屋に行っては色とりどりの花々に目を輝かせ、
店員さんによく花の名前や花言葉を聞いていたそうだ。
「お父さん、お母さん、お花ってすごいね!」
「そうだね。お家でもお花を植えようか」
父と母はそう言ってくれた。
「やったぁ!ありがとう!!」
家の庭に初めて植えたのは、
『ラベンダー』だった。
花言葉は幸せ。
まさに私達にピッタリの花だった。
…それから約10年
ある日の夜に両親の言い争う声が聞こえた‥
「だから、俺は浮気なんてしてないと
言っているだろう!」
「そんなの信じられないわ!!昨日だってスーツに
香水の匂いをつけて帰ってきてたし、女の人と電話しているのだって聞いたのよ!」
「…そっそれは…。」
もう高校生だった私には大体わかった。
お父さん、浮気してたんだ…
それから父と母は離婚し、私は母のもとで
引き取られることになった。
「あなたにまで、心配をかけてごめんね…」
「大丈夫だよ、お母さん。
浮気する方が悪いんだから!」
「…そうね笑 」
こんな会話をしながらも
毎日充実した日々をおくっていた。
そして何十年かたって、
母も亡くなり、一人ぼっちになってしまった。
私の家族はもう花だけだった。
今日も水をあげながら、花を眺める。
「…私は死んでも一人ぼっちなのかな…?」
こんなことを思うようになっていた。
その後はお金も底をついてきて、
生活するのも限界だった。
そして私は、一番の親不孝をしてしまった。
……すずらんとトリカブトをすり潰し、
水で流し込んだ。
そしてすぐに庭に出て、花畑に座り込んだ。
どちらも猛毒だと言われる植物だ。
「どうせ死ぬなら、大好きな花に埋もれて死にたい。」
…ありがとう。みんな…
これが最後の言葉だった。
私の葬儀には誰か来るのかな?
もしも来てくれたら、
棺桶に沢山の花を入れて欲しい。
そうだな、花は…ラベンダーがいいな。
こんな死に方をして、天国に行けるとは
思っていない。
むしろ、地獄行きだろう。
でも構わない。
母に会えないのは悲しいけど。
地獄にはどんな花があるのかな?
こんなことを思ってしまうのだった。
9/17/2023, 12:48:43 PM