白眼野 りゅー

Open App

「どんなに離れていても君が好きだよ」

 と、空港にて君は寂しそうな風もなく微笑んだ。僕はそれが、すごく嫌だった。


【どんなに離れていても、君はきっと大丈夫】


 彼女の言葉を、偽りだと思ったわけではない。君は賢いから、物理的な距離を心の距離と勘違いするような過ちは犯さない。

 でも、「どんなに離れていても」か。まるで、運命か神か、そういう抗いがたい何かが、僕らの仲を引き裂くような言い分だ。

 実際は違う。離れていくのは、君の意思だ。この空の向こうに、僕と一晩中駄弁って昼まで隣で寝たり、何でもない日にサンドイッチを作って公園にピクニックに行ったりする日々よりも大切なものがある。と、少なくとも君は思っている。

 僕が君の口から聞きたいのは、そんな恋愛ドラマを適当に再生すれば聞けそうな言葉なんかじゃなくて、もっとどろどろとした、つまりは僕のそれと同質なものなのに。

『こんなに君が好きだから、離れたくないよ』

 そんなにからりと笑われたら、言えないじゃないか。

4/26/2025, 11:54:23 AM