しじま

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 お酒を呑んでゴキゲンな君がグラス片手に、椅子からフラフラと立ち上がるやいなや歌を歌いだす。

母国の言葉なのだろう、淀みのない流れるような歌声を聞いている内に「ああ、あの曲か」と把握。

気持ち良さそうに、高らかに歌い続ける君を肴にして、私はグラスを傾けた。

……だいぶ音を外しているようだが。

酔っ払いは音の外れなど気にすることもなく、一番を歌い上げるとすかさず二番目に突入。

歌詞がうろ覚えなのか酔いが回ったのか、途中から意味の無さげな音の羅列になって、しだいに呂律まで回らなくなっていき、かくりこくりと舟まで漕ぎだした。

立ったまま寝てしまいそうだったので椅子に座らせてやると、そのまま横になって寝入ってしまった君。

ブランケットを掛けてやり、君が歌っていた歌を繋ぐように歌う。

君を起こしてしまわないように、声量を抑えた声で。

for__auld__lang__syne__.

遠い日の思い出を再会した旧友と懐古する歌を。

テーマ「声が枯れるまで」

10/22/2023, 6:00:15 AM