『香水』
「なんか、良い匂いする。」
突然、僕に顔を近づけてくる君。
「何か付けてきてるだろ。なんだ?嗅いだことあるな。」
何か付けてるって。お洒落に特別興味が無い僕が匂いに気を使うはずが無い。
気のせいじゃないか。そう言おうとした瞬間、濃くて甘いのに優しくて熟した果実のような香りが微かにした。
なんだろうと不意に頭を触ってみると、小さなオレンジ色の粒がぽろぽろと落ちてきた。
拾い上げてみると小さな花で、先程の香りがする。
これじゃないか。
何の花だろうと思っていると君がまた近くに寄ってくる。
「あ、それか。金木犀。それくっついてたんだな。」
キンモクセイ。惑星みたいな名前だと思った。
良い匂いだ。秋の匂いだ。と君が僕の手から花の香りを嗅ぐ。
そういえば、君の吐く息が白くなり始めた。柔らかそうな鼻と頬が赤くなってきている。
日がだいぶ傾いて、オレンジ色の空に段々と青紫色が塗りたされている。
「寒い寒い。肉まん買って帰ろう。」
君が手を握ってくる。ぽろぽろと小さな星が落ちていく。
君の温もりを感じながら、これからの秋はこの香りで今日の君を思い出すんだろうなと思った。
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あんまり関係ないけどずっとあっためてたので、
香り関連ってことで…|-・。`)コソリ
8/30/2023, 3:06:43 PM