陽射しは真上、
舗装されたアスファルトは、
息をするように熱を放つ。
その上で、
バニラ色の雫が静かに溶けていく。
ほんの数秒前まで、
私の手の中で冷たく、甘く、
確かに存在していたもの。
それが今は、
形も香りも崩れ、ただ黒い路面に染みていく。
屈んで手を伸ばせば、
指先はもうべたつく熱と、
戻らない甘さだけを拾う。
あのとき落ちなければ、と
頭の中で繰り返しても、
風はそれを慰めるどころか、
砂埃を連れてきて、最後の輝きを曇らせた。
溶けてしまった甘さは、
口に運べないまま、
靴底に貼りつく記憶だけを
残して消えていった。
8/11/2025, 2:15:27 PM