#110 空色に重ねるセンチメンタル
誰も知らないけれど、
私の視線の先にはいつも彼が居た。
でも、彼の視線の先にはいつもあの子がいる
そして、おそらくあの子も彼と同じ気持ちのように見える。
残念ながら、私と彼は一度も視線が交わることはなかったし、この先もずっとなさそうな気がしていて、
2人の間に割り込んで自分の気持ちを伝えるだけ伝える「ダメもと」もアリかもしれないと迷っていると、
「そこまで頑張るほどのことかしらね〜?」
賢いふりをしていたい自分がささやいた。
.....
誰にも悟られないよう
ふぅっとため息をついて
こっそり抜け出して屋上に出る。
久しぶりに『彼』を視線から外すと
その視線の先には梅雨明けの空
昨日までの梅雨空を夏が押しやったばかりでまだはっきりしない水色の空。
でも、きっと来週になれば
コバルトブルーの夏空になるのだろうね。
私はエイッと空に向かってひと伸びをすると
空色に重ねたひとときのセンチメンタルを屋上に置いてオフィスに戻っていった。
まだまだ賢いふりを続けていたいから...。
お題「視線の先には」
7/20/2023, 8:19:58 AM