それでいい
なあ、どうしてなんだろう。
「なんで、あんたが泣くんだよ」
そう言いながら、俺は彼女の涙を拭う。
「だって! ……あんなに馬鹿にされてんのよ! あなたこそ、なんでそんなに平然としていられるの!?」
まあ、こちらの落ち度でなくて、逆恨みみたいなもんだ。自分はなにもしていない。
つまり、ただの濡れ衣だ。それ以外の何ものでもない。
しかし俺はいかんせん、感情が出にくい。
「あんたが、そこまで泣くことか?」
「悪い!?」
どうしてなんだろう。
彼女の泣く姿を見ていると、それだけでもう、充分に思える。
俺とは正反対の、とても、涙脆い小娘。
だから、なぜだか。
「……あんたは、それでいいよ」
ふと、怒られると思うのに、笑みがこぼれる。
俺の分まで、あんたは泣いてくれる。
そしてきっと、それを見て、その涙に触れて、俺は救われる。
今は、それで充分だ。
4/4/2023, 12:16:47 PM