夢魚

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「……最悪だ。」

寝ている私の隣で彼が力無く呟いた。
眠気で意識が混濁する中薄目を開けると彼は気怠げそうにガシガシと頭をかいていた。腹痛のせいで私は彼に言葉をかけられなかった。
彼は私を見下ろす形で立っていた。顔色が悪く眉間にしわを寄せて仁王立ちで私を見つめている。

私、何かやらかしたかしら……。

彼の足元には中身の無い缶ビールと、大きな水溜まり。

「救急車……、いや、まずいか。」
何をごにょごにょ言っているのだろう。聴こえない……。

…なんだか水溜まりがやけに紅い気がする。でもたぶん気のせい。
それに彼が手に持っているピカピカするのは包丁なんかじゃないのだろう


動かない私を他所に、彼は床に広がる大きな血溜まりを拭き始めた。

【最悪】


6/6/2024, 11:40:37 AM