花とコトリ

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センチメンタル・ジャーニー

古い雑誌をめくる。
ぱらぱらと、乾いた音がする。
ふわりと、埃っぽい匂いがする。

この雑誌の発売日、どこにいて、何をしていたっけ。
そんなことを、ひとつひとつ思い出す。
記憶の中の私は、いつも髪が長くて、少し疲れた顔をしている。
それでも笑っている。
その笑顔は、なんだか切なくて、懐かしくて、まぶしい。

あの頃好きだった歌を、静かに聴く。
遠い昔の景色が、目の前に広がっていく。
変わらないものなんて、ひとつもない。
わかってはいるけれど、それでも、変わってほしくないものが、
たしかにあったような気がする。

淹れたてのコーヒーから、白い湯気が立ちのぼる。
その湯気越しに、窓の外をぼんやりと眺める。
雨上がりのアスファルトは、濡れて、黒く光っている。
空は、まだ少し灰色だ。

胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。
それは、痛みじゃなくて、
でも、幸せでもなくて。
たぶん、ただの「きもち」。
名前のない、かたちのない「きもち」。

センチメンタル・ジャーニー。
終わりのない、私の旅。
もうすぐ、夜が来る。
そして、また、朝が来る。

そうして、また、旅は続く。
何も変わらない、それでいて、すべてが変わっていく。
それで、いいんだ。
たぶん。

9/15/2025, 3:25:19 PM