とらた とらお

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おかしい。
何かがおかしい。
世界がとても、色褪せている。
色褪せているどころか、モノクロと言ってもいいくらい、世界から色が消えていた。

一体いつからこんな世界になった?
昨日?
わからない。
一昨日?
わからない。
気がついたら、世界から色が消えていた。

正直、色なんて、気にする余裕もなかった。
日々いっぱいいっぱいで、一生懸命で、目の前の色なんて気にする余裕はなかったんだ。

「どうした?ぼーっとして。」
『いや、世界から色が…、消えたんだ…。』
「色が消えた?色が認識できなくなったか?」
『……なんというべきか。たぶん色は、見えてるんだと思う…。色鮮やかさがなくなったというか…。』
「そうか…。極端にいうと白黒の世界?」
『うん、まぁ…。極端に言えばね。』

「そりゃあれだけ毎日、頑張ってればな。
 休めって俺が言ったって、どうせ聞きゃしねぇんだから、俺がありがた~い話をしてやろう!」
『いや、いらな…』
「なぜ世界が白黒なのか!
 それはな、お前が真っ正面に光を見据えて突き進んでるからだよ。
 カメラで写真を撮るとき、ギラッギラ輝いてる太陽に向かって写真を撮ったらどうなるよ?手前の物は真っ黒に写っちまう!逆光って言えばすぐイメージつくだろ?
 つまり、逆光状態になってるから、白黒なのさ!」
『はぁ…』

「だから!今お前の見えてる世界が白黒なのは、自分の目指してる光を真っ直ぐにとらえて頑張ってきたって証拠なの。頑張ってきたんだよ。むしろ、頑張りすぎてるってことさ。
 世界が白黒に見えるなんて、ヤバいってことは分かるだろ?」
『…うん。まぁ…。』

「まぁ…、じゃない!やばいんだ。
 頑張りすぎて、やばいんだよ。今のお前は。
 普段、世界はカラフルだろ?他の人だってそうだ。世界ってのは元々色鮮やかなんだよ。

 どうすれば色鮮やかな世界になるか。光に向かって真っ直ぐ進まなきゃいいんだ。斜めから見るんだよ。何なら後ろから光に照らしてもらえ!光に背中を押してもらいながら進むんだ。
 真っ直ぐに進まなきゃいけないなんてことないんだから。
 光だけ見て真っ直ぐ進んでたら、断崖絶壁まで克服しなきゃなんねぇじゃねえか。まわり道も必要なのさ。斜めから見た方がより世界は見えるんだよ。より簡単になることもある。
 そんなに頑張りすぎるな。手を抜くぐらいでちょうどいいんだから。
 それじゃ!光に背中を照らしてもらうために、反対向くぞ!」

『反対向く…?』
「休憩取るんだよ。
 光に向かって作業してたんだから、その逆、作業の手を止めれば、背中照らしてもらえるだろ?
 まずは、休憩、取るぞ。」

1/24/2023, 2:46:20 PM