ストック1

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ヤバい、寝坊した
遅刻する可能性が高い
チーズトーストを食べながら走っているけど、別に角で誰かとぶつかることを期待しているわけではないことは、先に言っておく
だいたい、私は爽快バトル系漫画一本で来ているので、その手の漫画は読んだことないし、本当にそんなお約束があるのかも知らない
それはともかく、足が疲れる
運動は苦手なんだって
体育よ滅べと毎回願うほどにはね
さらにマスクをしてるからメガネも曇る
もうマスクを外してしまおうか
いや、花粉症が怖いから無理
ってそんなことはどうでもいい
急がないと!
遅刻すると面倒なことになる!
いつも寝坊なんてしないのに、どうして!
昨日の夜だって、やたら眠かったから9時半には寝たんですけど?
あーもう、時間よ止まれ!

念じた瞬間、世界が静止した
車も人も、何もかも、その場から微動だにしない
え?え、え?えっ?
私、時間停止能力得た?
呆然としながら、立ち尽くす

「あれ?動いてる?」

後ろから声が聞こえた
振り向くと、普通に歩く人が一人
この人は、あまり話したことのないクラスメイトの男子だ

「俺の能力を発動して動ける人は初めて見たな」

どうやら、彼が時間を止めたらしい
ちょうど私が念じた瞬間に止めるとは、なんてタイミングか
じゃあ私が能力に覚醒したわけじゃないのか

「遅刻しそうだから時間止めたけど、動けるなんてびっくりだよ
せっかくだし、一緒に学校行く?」

時間が止まっててこっちがびっくりだよ
しかも軽い調子で誘ってくるし

「いいけど、色々詳しく教えてくれる?
能力のこととか」

びっくりしてるわりに、こんな落ち着いた返事をする私もおかしい気がする

「いいよ」

ああ、いいんだ
秘密にされると思ったけど
なんか奇妙な景色だな、と思いつつ、私はこの対して接点のないクラスメイトと、現実離れした世界でのんきに、時間が止まっているのをいいことにのんびり会話しながら登校するのだった

2/16/2025, 10:33:18 AM