きらり

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『月夜』

月夜の……それも決まって満月の晩にだけ会う少年がいた。
月光を吸収したかのように美しい銀の髪をした凛とした表情を携えた少年だった。

目が悪いモグラな私はその存在があまりにも眩しくて、遠い世界の住人だと思っていた。
なのに気安く声をかけて会話を重ねるから、だんだんと私の心の中に入り込んでくる。
優しい微笑みを向けられると、ドキドキしてなんだか落ち着かない。
もっと色んな表情を見たい、もっと色んな君を知りたいと思うのに、その一歩が踏み出せない。

だって私は目が悪くて、陽の光の元では顔を上げて歩けないモグラだから……。
凛として美しい彼とは不釣り合いな自分が惨めで、泣きたくなる。
だけど、あの優しい微笑みに胸の高鳴りが響いて、君に恋をしていると気付いたら、少しでも君の隣を歩ける、釣り合うような自分にもなりたいと思った。


好きだと告白して以降、もう何年もあの美しい少年には会っていない。
だけど月夜の……決まって満月の晩に、もしかしたら会えるかもしれないと淡い期待を抱いてしまう。
未練がましいと言われたけれど、どうしたってあの胸の高鳴りが忘れられない。
今も月を見上げて想う。
君は今、この同じ月を見ていますか?と……

3/8/2023, 10:18:43 AM