大狗 福徠

Open App

たくさんの宝物があった。
他の人達にとっては他愛もない様なものたち。
それでも私には一つ一つが輝いて見えた。
日に日に増えていく宝物たちに、私は頬を綻ばせる。
あの日君がくれたチョコの包み紙。
あの日彼が買ってくれた簪。
あの日彼女が手に入れるのを手伝ってくれた本。
貰った経路も相手もみんなバラバラで、
だからこそ、尚の事みんなが輝いて見えた。

でも、みんなとももうお別れをしよう。
宝を、宝となった思い出を与えてくれた彼らはもういないのだから。
私だけが縋っていても仕方がない。
みんなは笑顔で私の先に行った。
なら私はその笑顔に報いるべきだと思ったんだ。
それらを一つ一つ丁寧に処理していく。
包み紙をアクセサリーにして、
簪をまた誰かに渡して、
本を寄贈して、
他の宝物たちも、それぞれが役立って行けるように
送り出した。
私だけの輝きだったものたちが
今や誰かの輝きになっている。
どうかその輝きが続けば、増えていけば。
私にとってそうであったように、
渡した誰かが輝きになれば。
そうなったら、悔いはないなぁ。

2/17/2025, 1:45:01 PM