ざざ、と重みのある音が砂浜に響く。
彼は波打ち際で手を振って、いこうと言うのだ。
テトラポットにひょいと飛び移り、軽やかに笑う。
君に会いたいよ。僕は。
「ねぇ、カイ。」
『なんだい、ケイ。』
「君はなんで、なんで海で……。」
『ふと、綺麗な景色…走馬灯を見たいと思ってね。』
そうやって儚げに笑った彼が、綺麗に見えた。
僕はね、君がいないとやっていけないと思ってたんだ。君しかいない。君じゃないとダメだ、って。
彼の生前、僕らはいわゆるソウルメイトみたいに仲の
良い友達であった。どこに行くのも一緒。趣味嗜好も
一緒だから、進路はもちろん一緒。小学生から高校生
となった今の今まで、ずっと一緒だった。
「カイ。君とは、ここで分かれる運命だったの?」
『さぁね。ケイとは、初めて違うことを考えていると
感じたけど。』
「あぁそうだろうね、カイ。君はずっと冷静だった」
『ケイは、…ずっと明るくて羨ましかったよ』
言い淀みながらも、苦い顔をしながらそう言った。夏
の日差しみたいにカラリと笑った彼は、すうっと青い
空に溶けていった。僕の頬を、涙がつうと伝った。
「ねぇ、カイ。」
君は、君は。僕の大切な君は。
「 、 …。 ? 」
きっとこの声は、波音に耳を澄ませた者のみが
知るのだろう。僕の声は、すぐに波音に飲み込まれて
いくのだった。
7/5/2025, 12:56:03 PM