『枯葉』
・陸(りく)
・真央(まお)
かさりかさりと、真央と陸が歩く度に音を立てる枯葉。見上げると、すっかり寂しくなってしまった枝が風に吹かれ揺れている。
握っている陸の手は自分の手と同じくらいの大きさで、ひんやりとしている。彼の顔を盗み見ると、上でも前でも真央でもなく、地面の枯葉に視線を向けていた。
真央に対する愛情がなくなっていることなど、とっくの昔に知っていた。真央も、付き合いたての頃と同じ熱量があるかと聞かれれば、頷けなかった。
どちらから、という風でもなく、真央と陸は歩みを止める。真央を見つめる陸の目は、数ヶ月前から少しずつ冷めていった。
彼は少し迷ったような表情をしたが、やがて決心したように口を開いた。
「……別れよっか」
真央は、自分で思っていたよりもショックは受けなかった。いつかはこの時がくるだろうと、覚悟していたからだろうか。
真央は静かに頷き、陸の手を離した。愛おしさも寂しさも、全てを吐き出すつもりで、真央は陸に微笑みかけ別れの言葉を口にした。
「それじゃあ……さようなら。カップラーメンばっか食べてちゃ、駄目だからね」
「はは。分かってるよ」
彼は笑い、そして後ろを振り返りここを立ち去ろうとした。真央も反対側を向き、歩き始める。
しかし一体どうしたというのか、涙が溢れて溢れて止まらなくて、頬を伝い地面に落ちた。
彼との幸せだった日々が、思い出が、真央の心を強く揺さぶる。
やっぱりまだ大好き。そう思った。
陸が歩いていった方を真央も辿り、枯葉が鳴るのが段々と早くなる。走って走って、ようやく彼に追いつくことが出来た。
いきなり腕を掴まれた陸は驚いたようで、戸惑いながら「どうしたの」と真央に優しい声音で問いかける。
「やっぱり別れたくない。大好きなの、陸のこと」
「…………」
涙でぐしょぐしょになった顔で陸の顔を見上げる。
彼は真央の手を自分の腕から離させ、涙で濡れたその手をぎゅっと握り、静かに首を横に振るだけだった。
2/19/2024, 11:24:23 AM