目の前には古い瓦屋根が二軒。
その向こうには新築の鉄筋コンクリート。
斜め前は空き家で、壁には蔦が絡まり草が伸び放題。
そしてその家々の隙間を縫うように電線が走っている。それが、窓から見える景色の全て。
変わり映えの無い景色。
でも時々猫が屋根伝いに歩くのを見るのは好きだった。そして、夜。
何の変哲もない景色は一変する。
星空の下、瓦屋根もコンクリートの屋根も、伸び放題の草も真っ黒なシルエットになって繋がる。古びた空き家のシミも見えなくなって、町全体がやけに綺麗に見える。
そんな静かな夜。音も無くやって来る一匹の野良猫の、イエローゴールドの目だけが輝く。
夜は町を綺麗にしてくれる。
そんな気がする。
END
「窓から見える景色」
9/25/2024, 2:47:27 PM