遊橙

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どうして、そうしたかはわからない。

まだ青年が少年だった時のこと。
夜中に眠れなかったから部屋から抜け出し、持っていたおにぎりを持って庭の大きな木に向かった。

夜なのもあって、誰もいない。少年がここによく来る理由でもあった。木に寄りかかりいつもより明るい月を眺めていると、誰かがこちらに歩いてきた。

視線だけ向けると最近やってきた幼子であった。
幼子は来た当初、かなり落ち込んでいて誰が声かけても反抗し時には暴れていたりもしていた。

職員や同じくいる子たちは、そんな幼子に困っていたし、徐々に嫌煙し始めているなとみていたのを思い出す。少年も似たような立場だったっために覚えていた。

けれど特に話すこともなかったので、すぐに視線を外し月をながめる。
すると思ったより近くに来ていた幼子は、少年の2人分空けたくらいの距離に座った。
一瞬なぜだろうと思ったがま、いいかと特に何も言わなかった。

少ししておにぎりを持ってきていたのを思い出し、食べようと取り出す。
特に理由はなかったが一人で食べるよりはいいかと思い半分にしたおにぎりを幼子に渡した。

心底驚いた幼子は、しばらくおにぎりと少年を見比べていた。
恐る恐るおにぎりを受け取ったのを見て半分のおにぎりを食べ始めた。食べていると隣から鼻をすする音がしたが今度は顔を向けなかった。


そのあとはどちらが何をいうこともなく少ししてそれぞれの部屋に戻った。

次の日、人が来ない部屋に身を潜めボーとしていると普段は開かない扉が開いたので見ると昨日の幼子がいた。

視線をさまよわせ少年を見つけると少し表情を明かるくさせ、少年に近づく。そして今度は少年の隣に座ってきた。

少年は一人がいいかもしれないと、他の場所に向かおうと腰を上げようとしたが幼子が少年の裾を掴みそのままでいい?と言ってきた。

自分はどちらでもよかったのでそのまま腰を下ろし、特に話すことなくじっと座ったままそこにいた。
けれど穏やかな空間に悪くないと思った。

4/4/2024, 11:36:09 AM