野田

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~未編集~


キラキラとしたクリスマスカラーに彩られた繁華街を、イヴの夜を満喫するカップル達が歩いている

賑やかな繁華街の裏路地では、特別な夜を楽しむカップル達のために、ごうごうと音を鳴らしながら動きまわるエアコンの室外機達、そんな中で私は油のついた紺いろの防寒作業着に身をくるみ機械とにらめっこをしていた

油で汚れた腕をすこしまくり、時計の針を見れば普段ならリビングで家族とテレビを眺めながらちびりちびりと発泡酒を楽しんでいたであろう時を指していた



事の発端は、一日の業務がだいたい終わり、少しもて余した退社までの時間、初めて出来た彼女と過ごすクリスマスイヴのデートプランを鼻息荒くにやにやと語る後輩の話しを聞いていた時だった

残り数分でタイムカードを切れるなと、時計をみていると事務所の電話が鳴り響いた

この時間に鳴る電話は大抵よろしくない知らせだ、電話を取った人間のほうに視線を向けると、肩をがっくりと落としながら

「先週定期点検に入った○○町のイタリアンレストランでガスエアコンがトラブってるみたいです…」

誰かしらの残業が確定する一報だったようだ

そのエリアのメンテナンス担当は目の前にいる後輩のようで「まじっすか…」とひどく疲弊していた

先ほどまでの幸せそうな表情から一変し、まるでこの世の終わりのような顔になるのを見ていると心が締め付けられ、
ついつい、私が行くから大丈夫だと言ってしまった

電気エアコンよりもガスエアコンの方が複雑なうえ、経験がないと中々対処に困る場面も多い

そんな悪いからいいですよと言われたが50手前のおっさんにはクリスマスなんて関係ないよと返しながらロッカーから防寒着と作業道具を取り出し作業車に向かって歩いた

背中の方で後輩がありがとうございますと大袈裟に喜んでいたのを聞くと少し誇らしい気持ちになれた











12/24/2023, 12:04:13 PM