安達 リョウ

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裏返し(キライ、キライも)


『それは好きの裏返しね』―――。

………今日はさいあく。幼稚園でおとこのこにイジワルされた。
でもせんせいはそんなことを言って笑う。
むかついたから家に帰ってから、二人でアイスをやけぐいした。
やけぐい。いきおきよくかじって、いっぽん完食することをいう。

「ねーにいに。好きのうらがえしってなに」
「なーに」 
「ん? あれだ、好きだけど恥ずかしかったり照れたりで、好きの反対をしてしまう、所謂“ツンデレ”ってやつだ」
ツンデレ。きいたことある。
「でも好きのうらはキライじゃないの?」
「どーしてツンデレになるの」
ん? ん〜〜〜………
「何でだろな。言葉そのままの意味ではないな」

ん~~〜〜〜

双子が一緒に腕組みをして頭を捻る。
………いやまだお前らにはわからんて。

「………。にいにも“好きの裏返し”、するの?」
「え」
「あのこにイジワルしちゃう?」
不安な眼差しを向けられ、俺は目を点にする。
何だこいつら可愛いとこあるな。
「あのね、それは子供の特権なの。物心ついてまだしてたら、ただの性格の悪いおバカさんでしかないの」
おわかり?
―――努めて分かりやすく、丁寧に言葉を選んだつもりだったのだが。

「じゃあしてるんだ、にいに」
「あのこかわいそう」

……………………。

「誰が性格の悪いバカだ!」
てめーら待てコラ!!

―――一瞬でも可愛いなんて思った俺がバカだった。
蜘蛛の子を散らすように各々逃げて行く双子ども。逃げ足だけは優秀である。
「まったくアイツら………!」

『にいにも好きの裏返し、するの?』

するわけねーだろ!
………そう、するわけない。
………。してない、よな………?

途端に俺は疑心暗鬼になる。
―――その晩、今までの彼女に対する行動を一から見直す羽目になり翌日。

「大丈夫?」

………授業で欠伸を連発し、その彼女に心配される末路を辿ったのだった。


END.

8/23/2024, 7:44:22 AM