【ふとした瞬間】
いつも明るいあなたが、僅かに静止する。
ふと訪れるその瞬間に、はたりと気が付いていつも通りに振る舞おうとする。
(何か、あったな。)
長年、傍に居てようやく解った事。
あなたは、とても人間臭い。
だと言うのに。
ひとたび動揺すると、まるで手負いの獣か気紛れな猫のよう。
(さて、どう気を引いたものかな。)
ぎこちなく常を装う背中が、物悲しそうに見える。
「和真、ちょっと手伝って欲しい。」
そっと気を引くように、手招きした。
「え、何?かっちゃん、何してるの?」
何を隠しているのか、吐き出して流れ出してしまえば、憑き物の様に落ちてくれるだろうか。
「カズくんに癒やされたいので。充電させて欲しいです。」
ひらりと手招きしたら、ふらりと近寄って来たので、そのままあなたを抱きしめた。
「えへへ。かっちゃん、お疲れ様〜。」
背中をあやす様にトントンと叩いて、あなたの香りで肺を満たす。
「和真も、お疲れ様。今日はゆっくり休もう。」
あなたの後頭部を優しく撫でながら、抵抗しようとする体を少しだけ強めに抱き締めた。
「かっちゃーん!うぅ、ズルいよぉ。」
小さく縮こまった体内に凝るモノを吐き出すように、あなたの腕が自分の背中を強く抱き締める。
今は、幼子の様に泣いて。
明日も明後日も戦えるように。
4/27/2025, 10:19:07 AM