M.I.

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No.264『ラララ』

ラララ。
どこからか聞こえるそんな歌声が気になって声の主を探す。そうして僕は君に出会った。
優しく、でもどこか悲しそうに歌う彼女に一目惚れした。
彼女の歌が終わったタイミングで声をかける。
「君の歌、すごく上手だね!」
そう言った僕に彼女は悲しげに笑う。
「…これは私の大切な人に向けて歌った歌なの。彼に届いてくれたかな?」
一目惚れした彼女にはすでに大切な人がいた。当然のようにショックを受けるも、今は彼女に慰めの言葉をかけることに専念した。
「大丈夫だよ!君のそのとても素敵な歌ならきっとその人に届いてる」
彼女はまた悲しげに笑った。
するとどこからともなく鐘の音が聞こえてきて僕は帰らないといけない時間になった。
じゃあ、と挨拶して彼女に背を向ける僕に向かって彼女が呟いた言葉は僕には届かない。
「……歌が届いても、あなたが私を忘れているんだからそれは届いていないも同義じゃない…」

3/8/2025, 8:51:51 AM