駒月

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 懐かしい声に引き込まれるように、今日も私は夢を見る。
 夢の中で目を覚ますと、あの頃の日常があった。
 あの人がまだいた日々は何もかも煌めいていて、恋い余る私に笑いかけるあの人が眩しくて。

「体は大事ないか?」

 子の為、私の為に、体を張って戦う夫は誇らしくて、でもやっぱり心配だった。
 鬼との戦いは激化しつつある。明日には死ぬかもしれない。明るい未来が想像できなかった。

 ああ、どうか……私からあの人を奪わないで。



 ──祈りは虚しく、私は目を開いた。
 現実に戻ると夫はいない。訃報が届いてどのくらい経っただろうか?
 まだ幼い我が子を抱きながら、暗がりで泣いた。
 どうして。どうして。
 こんな悲しい気持ちになるために一緒になったわけではないのに。
 母なのだから、強くあらねば……そう思っても心は柔らかく崩れてしまいそうだった。
 白み始める空はいつも夢の終わり。私はずっと夢を見てたいのに。
 涙を拭いた。平気なわけじゃない、全然駄目だ。
 こうしてまた、あの人のいない新たな一日が始まるんだ……




【夢を見てたい】

1/13/2024, 4:28:10 PM