『さよならは言わないで』
最近友達が遊んでくれない。誰と遊んでいるのだろうとそっと伺ってみると、その子は同じ年頃のこどもたちと声を上げてボールを追いかけていた。私の他にも友達ができていることをうれしく思いつつも少し寂しい気持ちになって胸がチクチクした。
私を視ることができるのは小さなこどもか、よっぽど純粋なひとだけ。家の庭でひとり遊びをしていた子に話しかけたときに私はその子の初めての友達になった。
「近くの広場にね、いつもボール遊びしてる人たちがいるの。
でもどうやったら混ぜてもらえるかわからない。
混ぜてって言っても断られたらどうしよう」
少し引っ込み思案な友達を励ましたり背中を押したりしたのは私。それは私のことがいつか見えなくなっても大丈夫なようにしたかったから。
広場から少し離れたところにいた私の元へボールが転がってきた。
「あっ!」
「あっ、」
私の顔を見てパッと顔を輝かせた友達は、一緒に遊ぼう、と誘ってくれた。
「おーい!ボール早く!」
けれど遠くの子はボールは見えているけれど、私のことは見えていないようだった。
「早く行ってあげて」
何度かこちらを気にする友達に私は手を小さく振った。
友達には友達がいて、でも私のことが見えなくなったわけではないことは胸のチクチクをほんのり和らげてくれた。それがたとえ今だけのことだとしても。
ボール遊びの声が響く広場から私はそっと歩き出す。いつかまた遊ぶこともあるかもしれないという思いと、もうそれはないだろうという思いのどちらともが胸から離れなかった。
12/4/2024, 3:20:56 AM