人の温もりが、只々恋しくなった。
それだけの、なんだか幼稚な理由が、俺の足を無意識にあいつの元へと向かわせた。
そして気づいた時には、あいつの寝室のドアをノックしていた。
あ、と思った時には既に手遅れで、扉がゆっくりと開き、中からパジャマ姿のあいつが顔を覗かせた。
「あ、えと...その、すまん。なんでもないんだ...おっ俺戻るから...邪魔して悪かったn」
慌ててその場から離れようとしたところで、突然腕を掴まれて引き寄せられてしまった。
今のその状況を直ぐには認識出来なくて、けれど認識した瞬間に、身体が沸騰するほど熱くなった。
「なっ、おま...!?///」
「...こうして欲しかったのだろう?」
俺が驚いている間に、こいつは落ち着いた声でそう呟いた。
「違っ......」
違う、そんなんけないだろう。と、いつもの俺だってらそう言っていただろう。
けれど、なんでかな。今は、この抱き締められている状況に、安心感を感じていた。
なんでだろう、そう思うやいなや、こいつは背中をさするように撫でてきた。
「大丈夫...大丈夫だ...」
ゆっくりと、ゆっくりと、言い聞かせる様に言葉を掛けられて、
まるで子供をあやす様な手つきで、背中を撫でられて、
そうしたら、なんかもうダメで
今まで溜まっていた何かが溢れ出るように目尻が熱くなって、
その後は、ただ。声も無く、静かに、あいつの肩を借りて泣いてしまった。
#涙の理由
85作目
10/10/2023, 1:24:05 PM