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「可愛らしい女の子たちですよ。よく頑張りましたね」

真っ白な肌、大きな目、綺麗な鼻筋。この世とアンバランスな美貌を持ち合わせた女の子の双子であった。
この子達の父親はわからない。あの不細工なおっさんだと可哀想だな、とどこか他人事のように思っていたが、ここまでの美しさならあのモデルの方かもしれない。
19で夜逃げの如く上京し、色んな男の家を巡り巡ってヒモとして生きてきたが、まさか自分が子供を産むとは夢にも思っていなかった。妊娠が発覚したのは6ヶ月。中絶しようにもできず、やむを得ず出産の決意を固められた。
産まれたての人間は愛おしさ故に可愛らしく見えるが、実際にフィルターを介さずに見ると全くである、と聞いていたが、案外綺麗な顔をしていた。これが母性本能というやつなのか。
「かなり上手に産みましたね。3日後には退院できると思いますよ」
明日にでも退院させて欲しいと言ったら怒られるだろうか。とにかくここの空間から逃げ出したい、その一心であった。

退院後、赤ん坊と共にアクセサリー店へ行った。
「お前ガキ産んだのか? しかも双子じゃねぇか。どれ、面見してみろ。」
入店するや否やトウマが無駄にデカイ声で話しかけてきた。
「デケぇ声出すんじゃねぇ馬鹿が。産後の女を労ることはできないわけ?」
「わりぃわりぃ、ホントにお前が産んだんだな。にしてはキレイな顔してんじゃねぇか。誰の子?」
「多分ちょうど1年前ナンパされたあのモデル、わかんないけど」
「あーあのクソガキかよ。確かに顔だけは良かったな、顔だけは。で、産後早々何の用だよ?」
「ああ、このガキ達のためにネックレス作ってくれない?」
「ん、いいぜ。どんなデザイン?」
「『冬愛』と『冬羽』って掘って。あとは任せる」
「お、名前か? 良い名前つけて貰ってんなおめぇら! ちょっと待ってろすぐ作る」
そう言って、奥の部屋へと行った。
冬に産まれた双子だからという理由で名付けた。安直すぎたかもしれないが、個人的にはかなり良い名前だと思う。
しばらくするとトウマが戻ってきて、両手に小さいネックレスを持っていた。
「ん、できたぞ。ガキ用に小さめで、タグにそれぞれ名前彫ってある」
本当にトウマが彫ったのか疑うほど上出来であった。
「ありがと、サイズもピッタリ」
「あたりめぇだろ俺が作ってんだから。出産祝いってことでお代はいらねぇよ。じゃあ俺ちょっと急ぎの用事あるからじゃあな」
一方的に会話を終わらし嵐のように去っていった。私も行かなければならないところがあるため、足早に店を出た。

15分ほど歩くと目的地が見えてきた。赤ん坊達は何も知らず呑気に可愛らしい顔で寝ている。
ある建物の前で立ち止まった。1度赤ん坊たちを地面に置き、ダンボールを用意した。その中にそっと赤ん坊達と毛布をいれ、一歩後退した。日が落ちてくるにつれ、気温が低くなっているのが分かる。早く暖まりたかったため、赤ん坊を置いたまま足早にその場を離れた。あそこならきっと保護してくれるはず。そう思い顔をあげると、雪が降り始めていた。あの双子の肌のように真っ白で美しい雪だった。

1/7/2026, 6:19:37 PM