名無しのきらり

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 ほとんど人のいない昼休みの教室で、イジワルな女の子が私の席にやって来て言った。
「ねえ、隣の席のあいつのこと、好きなんでしょ。」
 恋愛を恥ずかしいものだと思っていた私は、内容を理解する間も無く否定した。
 嘘つくなよ、と言い捨ててイジワルな女の子は私の前から去った。
 女の子の言葉を反芻する。
 だってあいつは、仲良しの友達で、おもしろくて、やさしくて、話してて楽しくて、ずっと一緒に遊んでいたくて、かっこよくて、
 好きだ。
 ふっと頭に浮かんできた言葉に絶望する。
 それが恋だと気が付いたときには、もう失恋したかった。
「失恋」

6/3/2023, 11:31:54 PM