いとだま

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鳥のように翼があれども

 いや、全くばかな問いかけをされたと思った。ねえねえ、そこのお兄さん、もしあなたが鳥だったのなら、どうしますか。なんて、実にばからしい。鳥はあれ、阿呆である。私が鳥だったしても、どうにもなりようがない。
 とはいえ、擦れた私でも、時に考えてみることがないでもない。もし、この狭い背に翼があれば、今よりずっと、自由かもしれないと。
 しかし、すぐさま思いなおす。ばかなことを考えたと反省する。翼があったとしても、私はきっと飛ばないだろう。地に足つかねば何とやらと、そんな言い訳ひとつこぼしながら、獣道を行くのだろう。もちろん、乾いた土のよく見える、獣道である。
 翼は一等、邪魔である。お飾りである。私は決して、飛ばないのだから、駄目である。
 大地にすくと立って、私はそんなことを思ってみる。鳥の活発な、晴れた日のことだった。

8/21/2023, 11:06:33 AM