ゆきしろ

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「七夕祭り、一緒に行きませんか?」

小さく震えた声からは、緊張が滲み出ていた。
気になる異性をイベント事に誘ったことなんてないから、もし断られたらどうしようとか、直接会って誘うべきなのかとか、全くわからないまま廊下で出くわしてしまった彼に思わずそんな言葉を投げつけてしまった。

「…あ、俺?」

「いや、その。無理とかだったら全然いいの。蒼空くん忙しそうだし」

断られるのが怖くてか、早口で変な言い訳を連ねる。

「いいよ」

「…え、え?」

返ってきたのは、意外と軽い了承の言葉。

「ほんとに?ほんとにいいの?」

「うん。ちょうど雪菜ちゃんとどこか出かけたいなと思ってた」

そんな言葉で舞い上がって、それからは七夕祭りまでの日を毎日毎日数えて。
服も新しいのをわざわざ用意して、普段しないヘアセットなんかに力を入れたり。



そうして迎えた七夕祭り。
大きな笹に吊るされている色とりどりの短冊には、その数ほど人の願いがあるということを改めて感じられた。

「雪菜ちゃんは何おねがいするの?」

早速2人で書き始めた短冊。
彼は水色、私は白色。もうお願い事はとっくに書いたんだけれど、言うのが恥ずかしくてそっと短冊を隠す。

「内緒」

「じゃあ俺も内緒」

そう言って笑った彼。
身長の高い彼は上の方に吊るすけど、背の低い私は彼の位置からは明らかに見えてしまう。

「飾ってあげようか?」

わかっていながら、ちょっぴり意地悪そうに聞いてくる彼の表情は初めて見た。
普段とは違う彼に少しドキッとしたけど、こんなお願い事を見られる訳にはいかないので、沢山短冊が吊るされている場所に紛れさせた。

それを見てまた笑った彼。

「面白いね。もっと雪菜ちゃんのこと知りたくなっちゃった」

そんな一言にすらドキッとしてしまう。
あ、もしかして今お願い事、叶ったかも…。







────もっと仲良くなれますように。







テーマ:七夕

7/7/2023, 12:05:09 PM