悪役令嬢

Open App

『日常』

あたしの名前はモブ崎モブ子!
私立ヘンテコリン学園に通う高校一年生。

あたしには今、好きな人がいる。
同級生のセバスチャン・フェンリル君だ。

今日こそは彼に告白しよう。
そう思っていた矢先────

「モブ崎さん、
貴女に決闘を申し込みますわ!」

高飛車お嬢様がしょうぶ をしかけてきた! ▼

どうやらあたしはこの人を倒さないかぎり
彼に想いを告げられないらしい。

今日の勝負は"テニス"
お互いテニスウェアに着替えてコートに降り立つ。

「1セット取った方が勝ちですわ。よろしくて?」
「望むところよ!」

とは言ってみたものの、
モブ子はテニスの経験が皆無。

だがここで引いたら女が廃る。
ええい、なんとかなれー!

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

なんとかなるはずもなく、ビギナーモブ子は
高飛車お嬢様にボコボコにされていた。

鋭い音とともにサーブが放たれ、
モブ子の横を通り過ぎる。

『40-0』

「オーホッホッホ!貴女相手では
ウォーミングアップにもなりませんわ」

高飛車お嬢様の小馬鹿にした発言に
モブ子は歯を食いしばる。

ムカつく~~~~!!!!

スコアは5-1。
あと1ゲーム取られたら彼女に負けてしまう。
追い詰められたモブ子はある作戦に出た。

ラリーが始まったと同時に、
モブ子は高飛車お嬢様に語りかける。

「何でそんなに必死なんですか?
彼の恋人でもないのに」

「なっ!?」

「ただの雇用主と従業員の関係ですよね?
彼のプライベートまで束縛する権利は
あなたにはないはず!」

モブ子の言葉に惑わされた高飛車お嬢様。
その隙を狙い、モブ子はドロップショットを放つ。

「くっ!」

モブ子の覚醒と言葉責めにより、
高飛車お嬢様の調子が狂い始める。

『40-30』

フォアハンドのストレート、
バックハンドのクロス。

互いに打ち合う中、
高飛車お嬢様が口を開いた。

「モブ崎さん、先程の言葉ですが、
確かに私と彼は恋人ではありません。
けどそんな事はどうでもよいのです」

「えっ」

「なぜなら私は悪役令嬢!
この世の殿方の心は全て私のものだから!」

何そのジャイアニズム!
意味わかんないですけど!!

高飛車お嬢様の強烈なボレーにより試合は決着。

「ゲームセット!メア・リースー様の勝利です」

歓声が沸き起こる。
いつの間にかフェンスの外に人が集まっていた。

負けた。
項垂れるモブ子に高飛車お嬢様が手を差し出す。

「まあ、思ってたよりは戦えましたわね。
及第点を差し上げましょう」

は?ほんと何様なのこの女!
眉間をピキピキとさせながら、
二人は貼り付けた笑顔で握手を交わした。

待っていてね、フェンリル君。
必ずあなたを解放してみせるから!

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ぞわっ

「どうしましたか、セバスチャン」
「急に寒気が……」

一方その頃、セバスチャンは
謎の悪寒に襲われていたのであった。

6/22/2024, 6:45:05 PM