わをん

Open App

『一筋の光』

夜のジョギング中に浮遊するUFOに声を掛けられた。スマートフォンより大きくタブレットよりは小さいそれに機械翻訳されたような声でここに行きたいのですがどうしたらいいですか、と丁寧に尋ねられたのだ。中空には目的地の地図らしきものが映し出されている。小説や映画の影響で、宇宙人と言えば攻撃的だったり侵略を目論んでいたりというイメージがあったものの、その尋ねられ方に外国人観光客が思い出されてしまったので警戒心も抱きようがない。ここからさして遠くはない場所をどうにか説明すると、地図を仕舞ったUFOはありがとう、とお礼の言葉を残して去っていった。
しばらくのあとに、視界の端から空へ向かって一筋の光がゆっくりとした速度で過ぎていくのが見えた。手を降ってみるとこちらに気づいたようで、UFOの中からもなにかが振り返してくるのが伺い知れた。そのまま空高くへ上がっていくのを見送りながら、宇宙人も道に迷うことがある、という知見を得た私は、また夜のジョギングを再開することにした。

11/6/2024, 4:08:26 AM