古びた手記の一部から抜粋。

Open App



その音はいつも突然にやってくる。
笑顔と羞恥を引き連れて。







「新しい魔法史の問題、勉強したところ全然でなかったぁぁぁぁ!ヤマ張ったのに!」
「半分くらい新しい問題だったね」
「ねぇ、守仁の杖の材質なんて聞いたことあった???イチョウの木とか初めてしったよ」


同じ寮の3人で受けた授業は思いの外難しく、ああでもないこうでもないと次の魔法史への対策や答えを共有しあう。


「次の寮対抗って魔法史もあるんだよね?それまでに全部覚えられるかなぁ…」
「ちょっと頑張りたいよね!寮対抗舞踏会もスリザリン抜かして2位だったし!俄然燃えてきた!」
「もう何回か授業受けといて、答えが予測できるようにしときたいね」

次の行事に向けて結束を高めあっているとふいに地響きのような、岩が転がってくるような音がすぐそばで聞こえた。



「………でもとりあえずはご飯食べてこようか(笑)」
「そうだね…そこで問題出しあったりする?(笑)」
「…お腹空いたああああ!急げ!!」

羞恥を隠すように先に廊下を走り出す。ああ私ってやつは。やれやれと二人がクスクス笑っているのを背中で感じる。


でも、私は知ってるよ。
二人だって、授業中に(私より控えめだったけども)同じ音を出していたんだから。
真ん中にいた私はどっちのお腹の音だったのかも知っているんだからね。



羞恥に負けず今もぐるぐる鳴るお腹を押さえながら大広間の入り口を目指す。

さて、今日のお腹の音楽を満たしてくれるのはどんなご飯だろうか





「君の奏でる音楽」 HPMA

8/12/2024, 1:43:53 PM