「20歳」
「ねぇ、あなたは何歳になったの?」
どれだけ聞いても、呟いても、
答えは返ってこない。
遠い昔、あなたは産まれた。
産声をあげて、立派に泣いて。
抱きしめるたびに愛おしくなって、
あなたの声を聞くと、涙が溢れた。
嬉しかったの。苦しかったことや、
痛かったこと、辛かったことの
すべてが消えてしまうくらいに。
少し昔、あなたは10歳になった。
笑顔が綺麗で、立派に育って。
抱きしめるほどに愛おしくなって、
あなたの歌を聞くと、笑みが溢れた。
嬉しかったの。あなたが私のことを
好きでいてくれて、思春期でも
すべてが関係ないように、笑ってくれた。
つい先日、あなたは20歳になろうとしていた。
誕生日を楽しみにしていて、
ここまで立派に成長してくれた。
愛おしくなって、
思わず抱きしめてしまった。
あなたの声が聴こえると、涙も溢れた。
嬉しかったの。少しの寂しさもあれど、
あなたがここまで生きてきてくれたことが、
なによりも幸せだったの。
でも、あなたは事故に遭って、
誕生日の前日に亡くなってしまった。
「20歳になったら、
お母さんと一緒にお酒を飲むんだ!」
そう言って、あなたはこの日をずっと
楽しみに待っていたのに。
今日はあなたの誕生日。
20年、ここまで元気に生きてくれて、
ありがとうねって伝えたかった。
抱きしめて、愛おしく想いたかった。
ねぇ、あなたは何歳になったの?
どれだけ聞いても、呟いても
あなたは帰ってこない。
1/10/2026, 1:07:00 PM