給食に空気がでたのは、水曜日のことだった。冗談じゃなくて、本当に空気だった。献立は「白米・みそ汁・からあげ・空気」ってかんじで、おかず皿の隣に透明なパウチが膨らんでいた。「AIR」って書いてある。英語表記で、無駄にかっこいい。
「これは新メニューだ」と担任が言って、開けてみると割と良い匂いがした。すだちっていうのかな、カボスっていうのかな、とにかく、柑橘系だ。それだけでなく、ちゃんと食った感があった。
「うまい」と田中が言い、「健康にいい」と吉田さんがいった。
翌週にはテレビ局が取材にきて、また翌週には、給食は完全に気体化した。配膳はいらない。給食係はただの空気運搬係になった。
僕はというと、そろそろ息を吸うのが怖くなってきた。
まだ見ぬ世界へ!
6/28/2025, 6:31:50 AM