koromo(全てフィクションです)

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ハッピーエンド

人は俺に「僕、私を殺してほしい」と言う。
これが俺の仕事だから。
死にたい、でも死ねない、
そんなやつを殺してあげる仕事。
この仕事は世間的に見たらものすごく非人道的で基本批判の対象にしかならないし、そもそも殺しを職とするやつは人扱いされていない。
人は人を幸せにするために働く。
この仕事だってそれは変わらない。
だから俺はこの仕事に誇りを持っている。
殺しを依頼するやつらは死ぬことで柵から解放され、初めて自由になれると信じてる。
そいつらにとっては死が幸せにつながるんだな。
死の先に何かがあると思ってるやつもいる。
死は“終わり”だ。
“その先”なんてないんだよ。
だから、やつらのハッピーエンドは“死”そのものなんだ。これまでの辛い思いや苦しい思いを断つ、その瞬間こそが搾り取ったような安らかな幸せなんだ。
この世界で死んだことがあるやつは一人としていない。だから死んだあとの世界なんて知る由もない。
だけど俺にとっちゃたかが知れてんだ。

こんな俺のハッピーエンドはどこにあんだろうな。
そんなもの求めちゃいけないことぐらい分かってんだけどさ。

3/29/2024, 1:32:09 PM