こつこつと扉をノックする音が聞こえる。薄暗い張り詰めた空気を揺らしながら近づいてくる。感じ慣れた気配に触れて、やっぱり遠慮という言葉を知らないのだろうと甘い溜息をつく。ただじっとこちらを見つめてから、マッチを擦る。久しぶりに灯る蝋燭。もっと大切にするんだよと、お月様みたいなランプシェードを被せてくれる。部屋にこぼれた君の柔らかい声を一つ一つ拾いながら、今日も私は、その優しさに壁が蕩けていくのに気が付かないふりをしている。心の灯火
9/2/2023, 2:27:54 PM