何気ないふり
今日は暑い。昨日の寒さが嘘のようだ。
まだ3月なのに日傘を必要とする日射し。
用心して厚手のジャケットにしたことを後悔しながらひたすら歩いていく。鳥達が楽しげに鳴きかわす声が聞こえる。もう春なのだ。
山道を進み目的の施設が見えてきた。ここを訪れるのは3年ぶりだ。最後に来たのは、季節は同じなのに雪がちらつく寒い日だった。
深呼吸してインターホンを鳴らす。お待ちください、と懐かしい声がしてドアが開いた。
いらっしゃい、久しぶり。
あの頃と同じように迎えてくれる。
私も変わらぬそぶりでこんにちは、と答える。
歩いてくるの暑かったでしょう。昨日は雪が降ったんだけどね。
彼はそう言いながら部屋へ案内してくれる。
ここに来るのが1日違えば、あの雪の日を思い出して昔と同じように振る舞えなかったかもしれない。
ほんの少しの違いが運命を変えるのだ。あのときも今も。
3/30/2024, 10:28:10 AM