雷鳥໒꒱·̩͙. ゚

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―何でもないフリ―

私の特技は、何でもないフリをすること。
辛い時や苦しい時、しんどい時、
それから困った時、
私は何でもないフリで誤魔化す。
癖とかではなく、意識的に。
その心理は…特に考えたことがない。
強いて言うなら、周りに迷惑をかけたくない
ってところだろうか。
でも、自分で言うのもなんだが、結構上手くて、
今まで誰にもバレたことがない。
その特技をいいことに、私は今日も嘘をつく。
「…ん〜…めいさ、最近、
ぼーっとしてること多いよね?なんかあった?」
小学校時代からずっと仲の良い、私の大親友。
私の異変に気づき、
気にかけてくれたらしいけれど、
『んーそうかな?特に何もないけど
…あ、最近午前中眠いから、そのせいかも』
「そっか!それならいいんだけどね!てかさ!―」
私の特技では、大親友すらも、騙せてしまう。
先生にも、家族にも、バレたことがなかった。
それなのに、
「ほーら、またそうやって
何でもないフリするじゃん」
そう少し咎めるような表情をした彼は、
私の彼氏だ。
「ゆっくりでいいから、
その、人に頼れない癖、治してこうねって
いつも言ってるでしょ〜?」
この人にだけは、何がなんでもバレてしまう。
今はもう大分慣れたけど、最初見破られた時は
かなり驚いた。それが顔に出たらしく、
誤魔化せなくなってしまった。
「俺にはバレるんだからさ、何があったのか、
ちゃんと話そ?
でなきゃ、いつか苦しくなって倒れるよ?ね?」
彼の言うことは理解できる。
ちゃんと治していかないと、とも思う。
でも、簡単には治すことができなくて、
『っいつか…いつかまた話すから!』
そう言って笑った。
勿論作り笑顔だ。
彼も、訳ありだということは悟っているらしく、
この笑顔を見せると、困ったような顔をして、
それ以上は踏み込んでこない。
『大丈夫!なんでもないから!』
その度に、追い込まれてく感覚に陥る。

『ん?別に何でもないよ?』
私は、今日も彼に嘘をついた。
「それさ、もう口癖だよね、
何でもないよっていうの」
『え、全く自覚ないな…』
「良くないよ?それ」
『でもさ、しょうがないじゃん?
ほんとに何でもないんだから』
「はぁ…」
彼は、彼らしくない溜息をついた。
「ごめん、今日という今日は無視できない。
ねぇ、何があったの?
何でいつも何でもないフリするの?
俺には言えない事情があるから?
俺ってそんなに頼りないかな?答えて」
『私、は…』
いつものように笑いたかった私の顔に、
光る一滴の涙が伝った。

12/11/2022, 10:31:41 PM