おさしみ泥棒

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※ 微ホラー?

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 公園のベンチに座って本を読んでいたら、ふいに袖を引っ張られた。目を向けると、見知らぬ子どもが立っている。
 背丈から察するに、おそらく小学校低学年くらいの女の子だ。すこし色の褪せた赤いワンピースから、がりがりの足が生えている。小さな頭に麦わら帽子をかぶり、うつむいた顔はよく見えない。

 軽くあたりを見回したが、公園内に私と彼女以外の人影はない。ひとりで遊んでいるのだろうか。
「どうしたの」と問いかけた私に、彼女は黙ったまま、握った小さな手を差し出してきた。

 もしかして、なにかくれるのかな。微笑ましく思った私は、本を置いてから、両手でそれを受けた。
 彼女が手を開くと、私の手のひらに、ぽと、となにか軽いものの落ちる感触がした。見てみると、白くて小さい。なんだろう。目を凝らす。

 それは、片方の羽を捥がれたモンシロチョウの死骸だった。触覚はひしゃげ、足も数本捥げている。

 驚いて顔を上げると、女の子は消えていた。呆然と見渡す昼下がりの公園には、私以外にだれもいない。

 手のひらに、乾いた死骸だけが残っている。

【テーマ:モンシロチョウ】

5/10/2026, 10:58:25 AM