#鳥のように
♪わたしの小鳥が赤い首飾りをして歌うのよ
鳩がもうじき死ぬと鳴くのよ
悲しい、悲しい、かな…ジャグ、ジャグ、ジャグ♪
そう歌いながら、小鳥に変えられてしまう女の子のお話を知ってる?
ヨリンデとヨリンゲルというグリム童話なのだけれど、鳥になったヨリンデを籠に入れて、魔女は自分のお城に連れて帰るの。
お城には七千もの鳥籠が並んでいて、元はみんな綺麗な若い女の子達なのよ。
「童話って色々変ですよね。魔女は何で女の子を鳥にするのかな。七千も飼ってたら、餌やりだけでも大変そうなのに」
そう言って笑う彼女の声は、鈴のように愛らしい。
最近できたこの年下の友人を、私はとても気に入っていて、彼女も年の離れた姉のように慕ってくれる。
ふと店の壁時計に目をやり、彼女は慌てたように立ち上がった。
「大変、もう出ないと終電なくなっちゃう」
「良ければ私の家に泊まる?ここからならタクシーですぐだから」
「わあ、良いんですか?」
「もちろん。すごく広いのよ、うちは」
女の子を鳥に変える寂しい魔女には、広い広いお城が要る。
何しろ鳥籠を、七千も置かねばならないのだから。
8/21/2024, 3:05:04 PM