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「胸の鼓動」


貴方の胸の中で、貴方の鼓動を聞くのが、好きだった。
トクン、トクンって、落ち着いたリズムが好きだった。
時々、「大好きだよ」って言うと、途端に照れて鼓動が早くなって。
それを聞くのが楽しくて、嬉しくて。
ついつい貴方をからかってた。

私だけがこの鼓動を、この場所で聞ける事が嬉しくて。誇らしくて。
貴方のリズムを覚えてしまう程、貴方に抱きしめられてた。

あれから何年も経って。貴方と長い年月を過ごして。
溢れる程の愛情を貴方に貰って。
本当に幸せな人生を過ごせたのは、貴方のおかげです。

お互い白髪になって、足腰も言う事をきかなくなって。
目も耳も、記憶力まで悪くなって。
それでも、昔と変わらず貴方が好きで。愛しくて。
「生まれ変わっても又一緒になろうね」って、ありがちな約束もして。

もう貴方の鼓動を聞く事はないけど。
貴方の笑顔を見る事もないけど。
貴方の声も聞けないけど。
今日が貴方との最期の日です。

でも、私は本当に幸せでした。
貴方と過ごせた時間が私の宝物です。
貴方に愛された事が私の誇りです。

ありがとう。

9/8/2024, 12:19:55 PM